介護施設に居住している認知症患者に対する抗菌剤投与の有益性~医学論文の活かし方 day2~

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1日1論文、30日で、
薬剤師としてレベルアップ!
医学論文の活かし方

2日目の論文は介護施設に居住している認知症患者に対する抗菌剤投与の有用性について。コホート研究を読んでみたいと思います。

Survival and comfort after treatment of pneumonia in advanced dementia

PMID:20625013

論文のPECOは?

P(どんな患者に?)

介護施設に居住している認知症患者の肺炎 225名

E(どんな介入を)

抗菌薬による治療(経口、筋注、点滴)*入院含む

C(何と比較して)

抗菌薬なし

O(どのように評価した?)

生存率、QOL

論文のチェックポイント

真のアウトカムか?

➡ 真のアウトカムといえる

調整された交絡因子はあるか?

➡ 年齢、性別、人種、機能状態、不安定なバイタルサイン

追跡期間は?

➡ 最大18か月

 結果はどうだったか?

死亡率

経口 HR=0.20(95%CI:0.10-0.37)

筋注 HR=0.26(95%CI:0.12-0.37)

点滴 HR=0.20(95%CI:0.09-0.42)

QOLスコア評価

抗菌薬治療なし:39.4

抗菌薬治療あり:34.0(経口)、33.8(筋注)、30.5(点滴、入院)

考察

介護施設に居住している認知症患者が肺炎を発症した際、抗菌薬による治療は生存率を改善する可能性があります。一方で抗菌薬による治療を受けると終末期のQOLを低下させる可能性もあります。

この論文では、研究参加者の90%以上に肺炎発症時に抗菌薬が投与されています。認知機能が低下していると、初期症状が見過ごされやすいため、重症化の危険が高くなるので抗菌剤治療がなされるのだと思います。

個人的には、施設に入所している高齢者の治療の意思決定は、本人ではなく、施設スタッフ、家族にゆだねられている部分が多いのかな?という印象で、将来的な予後よりは今現状で起きていることを改善させたいという思いが強い印象があります。薬剤師としては抗菌剤の投与の必要性を考えなければいけない部分もありつつ、本人、家族、介護者の思いに沿うことも必要と感じました。

コホート研究はチェックする項目は少ないですが、交絡などの影響は考慮しないと結果の解釈がかわってくると教わりました。コホート研究をチェックする際に便利なチェックシートはこちら

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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